暴力団事務所等が近隣にあることは路線価に織り込み済みであるとされた事例
(国税不服審判所裁決平11・3・18)
近隣に暴力団事務所等がある場合に、土地の価値は著しく低下しているかどうかが問題となった事例です。
請求人の主張は、「対象不動産付近には暴力団事務所やパチンコ店があり、その存在に起因する不安や騒音及び風紀上の問題により、対象不動産は、住宅地としての土地の価額は著しく低下しているので、「財産評価基本通達」によって算定された土地の評価額は過大である。」と言うものでした。
一方、原処分庁は、「暴力団事務所及びパチンコ店等は、路線価の基準日時であるH7.1.1において既に存在しており、価格にはこれらの事情が斟酌されている。」と主張しました。
≪審判所の判断≫
路線価は、公示価格等に基づき評定されており、その路線価を基に算定した価額は、特段の事情がない限り相続税の課税価格の計算においてその財産の時価と認めるのが相当と解されます。
請求人の主張する暴力団事務所及びパチンコ店等は、路線価の評定基準において既に存在しており、路線価には請求人の主張する事情を反映しているものと判断されます。
従って、本件土地の評価額は相当です。
≪私的意見≫
路線価は、3人の鑑定士で指定されたポイントを評価していきます。税務署は3人の価格の平均値で決めています。路線価を決める基本となる価格は「公示価格」です。
そして公示価格は、周辺の取引事例から決定しています。従ってその取引事例の価格が、パチンコ店や暴力団事務所のせいで、それらの施設がないよりも低くなっていれば、これらの要素が価格に織り込まれていると言えます。
その判断は難しいのですが、通常は織り込まれているものと考えます。
ただ、本件の場合はパチンコ店や暴力団事務所等がなかった時の路線価と、ある年の路線価を比べ、それらの要因が価格に織り込まれているかどうかを判断すべきだと思われます。