事例1
≪対象不動産の概要≫
対象不動産は世田谷区内の600㎡超の土地でした。
行政的条件は、
・ 第1種低層住居専用地域
・ 建ぺい率50%、容積率100%
・ 敷地の最低限度80㎡
・ 幅員6mの公道に接する中間画地
広大地として認められるために、本件の場合は600㎡という面積規模と、道路を入れる必要があるかどうかが問題でした。
≪財産評価基本通達による広大地≫
財産評価基本通達において広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの(大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものを除く)と定められています。
≪不動産鑑定による広大地の判定≫
①その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であるか
→広大である。
②戸建分譲住宅用地に該当するか
→該当する。
③開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるか
→必要と認められる。
従って、調査対象地は財産評価基本通達24-4「広大地の評価」における「広大地」に該当するものと判定しました。
事例2
≪対象不動産の概要≫
対象地は埼玉県の2,000㎡超の土地でした。
行政的条件は、
・ 第1種低層住居専用地域
・ 建ぺい率50%、容積率100%
・ 幅員6m及び12mの公道に接する3方路
3方路のため、道路を入れる必要があるかどうかが問題でした。
左図が、道路を入れた広大地の意見書。
右図が税務署の主張です。右図の場合は路地状敷地が6宅地できますが、開発道路を入れる必要はなく広大地とは認められなくなってしまいます。
対象地が3方路のため、道路を入れなくても区画割りができないこともない事例です。
どちらが経済合理性に叶っているのでしょうか?
色々な意見はあると思いますが、売りやすいのは言うまでもなく左図の区画割りです。
本件の場合は、税務署のメンツもあり、図A案が全面的に認められたわけではありませんが、税金は戻ってきたようです。
3方路の場合の広大地判断は、注意が必要です。
事例3~マンション適地に該当するとされた事例~
(国税不服審判所裁決平17・9・16)*通達改正前
広大地評価適用の要件として、マンション適地でないことがあります。本件の評価対象地は戸建住宅用地かマンション適地かが問題でした。
・規模は2,000㎡
・1中高、建ぺい率60%、容積率200%
・駅から300m。
マンションの他、低層のアパート、戸建住宅が混在する地域。
周辺の大きな画地上にはマンションが多く建っている地域でした。
容積率が200%の地域にあっては、周辺の状況や専門家の意見から判断して、あきらかにマンション等の敷地に適していると認められる土地以外は「広大地」に該当するものとして取り扱います。
しかし、本件の土地はマンション適地と認められ、広大地の評価を適用することはできませんでした。
理由として、
・昭和57年の被相続人の譲渡資産(土地)の上には譲渡後にマンションが建築されていること
・近隣地域において、地積が1000㎡を超える土地は何れもマンションが建築されていること
・対象地に、譲渡後マンションが建築されていること
等が挙げられました。
通達改正後であっても同様の結論になりうるかは今後の課題ですが、個人的には、譲渡後にマンションが建築されているケースは、やはり「広大地」として認められないのではないかと思いました。